その断熱材、RCF規制対策品ですか?溶解炉の安全とコスト削減のために知っておくべきこと

RCF規制

はじめに:断熱材の重要性

金属やガラスの製造現場において溶解炉は不可欠な設備ですが、その運用には膨大なエネルギーを必要とします。断熱材はこのエネルギー効率を高める重要な副資材であり、適切な断熱材を選ぶことでコスト削減や安全性向上に直結します。しかし、断熱材の中には規制対象となる物質を含むものもあります。本記事では、特にリフラクトリーセラミックファイバー(RCF)に焦点を当て、その規制内容や代替対策品について解説します。

RCF(リフラクトリーセラミックファイバー)とは?

RCFは高温環境下で使用される特殊な断熱材で、アルミナ(Al₂O₃)とシリカ(SiO₂)を主成分とするセラミック繊維です。以下のような特性から、溶解炉や高温炉などで広く使用されてきました。

  • 耐熱性:1000℃以上の高温に耐える
  • 断熱性能:優れた熱エネルギー保持能力
  • 軽量性:耐火レンガなどに比べると軽量で施工が容易

しかし、RCFは繊維が細かいため空気中に浮遊しやすく、発がん性の知られる天然鉱物繊維である石綿とは、明確に異なる材料ではありますが、繰り返し吸入・ばく露すると、肺に炎症が生じることから、健康被害のリスクがあります。このため、日本では2015年11月から労働安全衛生法施行令の改正により「特定化学物質」に指定され、厳しい規制対象となりました。厚生労働省HP→「https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000101692.pdf

RCF規制とは?

RCFは、石綿の代替品として広く使われていましたが、厚生労働省は、2015年11月1日にRCFを、健康に及ぼすリスクが高いと評価し、RCFに係る労働者の健康障害防止対策を強化すること等を目的とした、「労働安全衛生法施行令」「労働安全衛生規則」「特定化学物質障害予防規則」を改訂しました。RCFは「管理第2類物質」に分類されており、その取り扱いには以下のような対策が義務付けられています。

  1. 容器・包装への表示
    名称、成分、人体に及ぼす影響、安全性及び反応性などを、容器・包装に記載
  2. 文書の交付(SDS)
    成分及びRCFの含有量、人体に及ぼす作用、危険性及び有害性等を記載した安全データシートの交付
  3. 発散抑制処置等
    局所排気装置及びプッシュプル型換気装置の設置
  4. 作業主任者
    「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業者主任者技能講習」を修了した者のうちから 作業主任者を選定
  5. 作業の管理
    RCFの粉塵吸入を防止するために有効な呼吸用保護具、作業衣の着用が必要
  6. 作業環境測定
    6カ月以内に1回、定期的に作業環境測定士(国家資格)による作業環境測定の実施
    測定記録30年保存
  7. 健康診断
    6カ月以内ごとに1回、規定項目について健康診断の実施
    健康診断結果30年間保存

RCF代替品への切り替え

RCFを使う現場では作業者の健康被害を防ぐために上記の対策が不可欠ですが、その対策をとるためのコストもかかります。そこで、RCFの代替品としてアルカリアースシリケートウール(以下AES)が広く使われるようになりました。AESは生体溶解性繊維の一種です。生体溶解性繊維(バイオソルブルファイバー)は、BSFと略され、吸引等で人体に摂取されたとしても、体内のマクロファージなどにより、分解・排出されやすいとされています。AESは、シリカ質、マグネシア質、カルシア質を主成分とした、人体にとって安全性の高い生体溶解性繊維です。

石綿・RCF・AESの違い

断熱材として使われてきた石綿、RCF、AESは以下のような違いがあります。

 正式名称主成分安全性
石綿アスベスト天然鉱石 (アモサイト・ クロシドライト など)⽯綿にばく露すると、じん肺(⽯綿肺)、肺がん、悪性中⽪腫、良性⽯綿胸⽔(胸膜炎)、びまん性胸膜肥厚を引き起こすと報告されている
RCFリフラクトリー
セラミックファイバー
シリカ (SiO₂)
アルミナ (Al₂O₃)
IARC(国際がん研究機関)により、吸入により発がん性の可能性がある物質として、グループ2Bに位置付けられている
AESアルカリアース
シリケートウール
シリカ(SiO₂)
マグネシア(MgO)
カルシア(CaO)
環境が厳しいEU(欧州連合)のEU CLP規制1271/2008EC (化学品の分類、表示、包装に関する規則)においては、NotaQ(適用除外要件)に該当し、発がん性分類に当てはまらないと位置付けられている。 (IARC(国際がん研究機関)では、アルカリアースシリケートウールは発がん性の分類の記載なし。)

AESの特徴

AESを使った断熱材は以下のような特徴があります。

耐熱性: 常温から連続使用で1250~1300℃まで使用可能

優れた断熱性能: 高温環境下でも安定した断熱性能を発揮し、熱損失を大幅に削減します。

軽量性: 軽量であるため、施工が容易です。

柔軟性: 様々な形状の設備にフィットし、隙間なく断熱することができます。

安全性: 人体への安全性が高く、作業環境を改善します。

AES導入事例

  1. 金属溶解工場A社
    • RCFからAESへ切り替え。
    • 作業者の健康リスク低減と運用コスト削減を実現。
  2. 製造工場B社
    • 多層構造断熱材(内側:AESウール、外側:グラスウール)を採用。
    • 熱損失を大幅削減し、省エネ効果を達成。

まとめ

RCFは断熱材として永らく使われてきましたが、現在規制対象となっています。熱源を使う現場においては、安全性と効率性を兼ね備えた代替品への切り替えが重要です。

当社では、RCF規制対策品であるAES製品を幅広く取り扱っております。製品に関する詳しい情報はカタログページからご覧ください。まだRCFをご使用を検討の際はお気軽にご連絡ください。

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